はたして「ケムトレイルの証拠」と言えるのでしょうか?
ある男性が採取した瓶の水を分析した結果、高濃度のバリウムが検出されたというニュースです。
最近、日本語字幕バージョンが出まわり始めましたので、さっそく検証してみましょう。
アーカンソーとルイジアナ州境に住んでいる男性が、ある日空を見上げていると、「奇妙な飛行機雲」から「粉が降ってきた」ことに気づき、彼はその粉を採取します。
そして、その粉入りの水を、KSLAテレビが研究施設に持ち込み、分析してもらったところ、高濃度バリウム(6.8ppm)が検出され、なんと、安全基準量を3倍上回っていた、というセンセーショナルな報道でした。
この動画をさらっと見ただけの方は、分析資料という裏付けがあるし、テレビの報道番組なので、「やっぱりケムトレイルって本当にあるんだ、バリウム撒いてるんだ・・・」という感想を持ってしまうかもしれません。
が、実際、高濃度バリウムなんて、検出されてないんですよ!!!
これ、単位を思いっきり間違えています。
男性が指し示している値は、68.8㎍/Lです。
これは、水1L(リットル)中に、バリウム68.8㎍(マイクログラム)含まれている、ということです。
単位は㎍(マイクログラム)です。どうやらここに、勘違いの原因があるようです。
ここで、単位のおさらい。
1㎍(マイクログラム)=0.001㎎(ミリグラム)=0.000001g(グラム)です。
1マイクログラムは、百万分の1グラム
1マイクログラムは、千分の1ミリグラム
1ミリグラムは、千分の1グラム
ですから、68.8㎍/L は、0.0688㎎/L であり、0.0688ppm です。 6.8ppmではありません。
(濃度の単位は、ppmよりも、㎎/Lを用いることが主流です。一般的に、㎎/L=ppmと考えて良いでしょう。)
では、68.8㎍/L(0.0688㎎/L)という値が、はたして異常な数値なのか、調べてみましょう。
東京都水道局の「水道水質基準」を参考にしてみましょう。→こちらをクリック
それによると、バリウムは「要検討項目」であり、厳格な検査が義務づけられている「水質基準項目(50項目)」には含まれていません。
一応目標値として、0.7㎎/L(WHOと同じ基準値)が掲げられています。
水道水の基準が0.7㎎/Lですよ。
68.8㎍/L(0.0688㎎/L)・・・・・これ、全然異常な数値じゃないですから(笑)
ついでに、動画に写っていた、他の数値についても検証してみましょう。
Arsenic (ヒ素) 2.15 ㎍/L
Barium (バリウム) 68.8 ㎍/L
Cadmium (カドミウム) ND(検出せず)
Chromium (クロム) 3.78 ㎍/L
Lead (鉛) 81.9 ㎍/L
以上を、東京都水質基準と照らし合わせてみると、
ヒ素は、約5分の1、バリウムは上に書いた通り、約10分の1ですから、全く問題なし。
クロムは、毒性の有る六価クロムのことなのか分かりませんが、六価クロムだとすると、10分の1以下なので、これも問題なし。
鉛だけは高めの数値ですが・・・・アメリカの水道基準だとどうなんでしょう?(笑)
鉛の東京都水質基準は、現在0.01㎎/Lですが、平成15年3月までは、0.05㎎/Lでした。
(昔は、鉛製の給水管が一般的でしたが、東京都は全面禁止になりました。そういう地道な努力によって、基準値をより厳しくすることが可能になったのでしょう。)
ただ、「粉は、家の裏庭と父のトラックのボンネットに放置しておいたボウルから集めたものだよ」と言っていますので、採集に使われたボウルが、中国産の土鍋のように、鉛が溶け出すような安価な陶器のボウルであった可能性もありますね(笑)
そもそも、「飛行機雲から降ってきた粉」ということですが、それが本当に飛行機から降ってきたのか?ということは簡単には立証できません。
近くに煤煙を出す工場がある場合や、化学物質で汚染された土埃が風雨によってまきあげられる可能性を考慮に入れなければなりません。
とにかく、高濃度のバリウムが検出されたというのは真っ赤な嘘ですから、テレビで報道されたからと言って、真に受けないでくださいね!
この動画、他のことでも突っ込みどころ満載です・・・
飛行機雲が、チェス盤のように縦横無尽に現れることは、航路密集地帯ならば、普通に見られる現象です。
また、飛行機雲ならばすぐ消える、というのは全然正しくないですから。(笑)
天気が下り坂の日は、飛行機雲は消えるどころか発達します。
後半の、生物兵器云々の部分は、大戦中や冷戦時代に、各国がそういう研究をしていたことは事実なので、いまさら驚くことでもないでしょう。
アメリカといえば、農地が広大なので、農薬散布には航空機を使います。
ベトナム戦争で枯葉剤を撒いたのも事実です。
そういう下地があって、飛行機が何か化学物質を撒いている、というケムトレイル説がアメリカから広がったのです。
しかし、このKSLAニュースの担当者の中に、単位間違いに気付いた人が一人もいなかった、という事実こそ、ニュースにすべきですね。
KSLAにとっては、実に恥ずかしい報道ですね。
このように、報道がすべて正しいとは限りません。
陰謀論者がよく言っているように、「すべてを疑え!」ですよ。
すぐに信じてしまったケムトレイル陰謀論者のみなさん、この動画は、拡散させない方がいいですよ(笑)
あなたの科学知識が皆無なのがバレますから(笑)

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Thoughts on ケムトレイル・・・高濃度バリウム検出のニュースはお粗末なデマ